2016/05/15

Reference: Samuel Thomas von Soemmerring “Über die Wirkungen der Schnürbruste” 1793 (2nd ed.)



Samuel Thomas von Soemmerring “Über die Wirkungen der Schnürbruste” Berlin, 1793 (2nd ed.)

ドイツの解剖学者サミュエル・トーマス・フォン・ゼンメリング(1755-1830)による『コルセットの影響について』。本論文は医師が医学的見地から衣服の形態を論じたもので、今日の衣服解剖学のきっかけとなるような仕事である。
 ゼンメリングはこの論文で、コルセットによって骨格が歪み、健康が損なわれると説いた。第2版になって図版が添付され、説得力を持って世間に知られることになった(初版は1785年に出版された)。図版は18~19世紀風で、コルセットを着用した中世ヨーロッパ人の女性像の横に、古代ギリシア様式(カピトリーノのヴィーナス像タイプ)の女性像を配して、比較できるようにしている。
 ゼンメリングはコルセットによって胸郭が圧迫を受けて歪むとしているが、実際に下位の肋軟骨がすぼまり、逆さの円錐形になるようだ。シュトラッツの『女体美大系』の中にコルセットによって歪んだ骨格写真と、腹部内臓が下がった模型写真が掲載されている。
 コルセットから人体が解放されるのは、本論が出版された約100年後のことであるが、ゼンメリングの主張は時期尚早であったかというとそうではないと私は考える。ゼンメリングが発信した主張が周辺を巻き込み、大きな流れとなるまでに時間を要したのだろう。
(第2版、筆者蔵)

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